新しいサンダルがくれる夏のリズム。30代の私が心躍らせた一足

朝、窓を開けた瞬間に流れ込む夏の匂いに、私の足先がそわそわする。ワードローブの下段、まだ紙を噛んだままの新しいサンダルの箱が、早く外に連れ出してと目で合図してくる。30代になってから、靴を選ぶ基準は「可愛い」だけじゃ足りなくなった。仕事帰りにそのまま友だちとごはんに行けること、歩きやすさ、そして写真に映えたときに“今の私”がちゃんとご機嫌に見えること。全部叶えてくれる一足に出会えた気がして、胸が高鳴る。
箱を開けると、薄い紙をめくるたびに革の香りがふわっと広がる。ストラップは少しだけ太め、甲の骨ばりをやさしく隠してくれて、足首のバックルはきゅっと留めれば浮腫みの日も安心。ヒールは控えめなプラットフォームで、クッションが沈み込むたび、通勤路のコンクリートさえ柔らかくなるような気がする。昔は華奢なピンヒールに背伸びして、帰り道の靴擦れと引き換えに“気分”を買っていたけれど、いまは気分と現実を両方手に入れたい。そういうわがままを、このサンダルは簡単に叶えてくれる。
鏡の前で合わせてみる。白いTシャツとデニムにも合うし、黒のノースリワンピに合わせると一気に大人っぽい。甲のカッティングが足の幅をすっきり見せてくれて、スクエアトウの直線が全体をきりっと整える。ふと、ペディキュアを何色にしようか考える。コーラルなら海辺が似合うし、シルバーなら夜のテラス席で氷のグラスとリンクする。そんなことを想像しているだけで、普段より背筋が伸びる。
玄関を出て少し歩くと、足取りがリズムを見つける。横断歩道の白と黒の上を、サンダルのソールがタン、タン、って軽く叩いて、心の中のメトロノームにテンポを刻む。日差しは強いけれど、足元が軽いと暑さまで味方に思えてくる。通りすがりのウィンドウに映る自分をチラッと確認すると、足首の細さがちゃんと残っていて、ストラップがそれをきれいに強調してくれている。気分が上がると、歩幅まで変わるんだなって実感する。
ランチのあと、友だちに「それ、新しいの?」と聞かれて、思わず得意げになる。「うん、今年は厚底でもゴツすぎないのが可愛いよね。歩きやすいし。」って答えながら、心の中では“私、今の私に似合うものを選べたんだ”と密かにガッツポーズ。30代の“似合う”は、流行のど真ん中というより、自分の生活のリズムにフィットして、気持ちを一段上げてくれるもの。流行と私の交差点でピタリとはまる瞬間に出会えるから、ファッションは面白い。
夕方、日が傾いて影が長くなっても、足はまだ軽い。駅の階段を上り下りしても息が上がらず、踵がパチンと鳴るたびに、大人になった今の自分を少しだけ好きになれる。若い頃の“勢いで買った可愛さ”から、“私の毎日を助ける可愛さ”へ。あのグラデーションの途中に、今のサンダルがいる。
家に帰ってサンダルを脱ぐと、足の甲にストラップの影が薄く残っていて、今日一日の景色がそこに刻まれているみたいで愛おしい。明日はリネンのセットアップに合わせよう。週末は珈琲屋さんまで散歩して、そのまま川沿いを歩いてみよう。夏の間、どれだけこの一足と重ねていけるだろう。季節が変わるころ、きっとたくさんの思い出の音を足裏に溜め込んで、また来年もよろしく、と箱にそっと戻す。その未来まで、なんだか楽しみになっている。
新しいサンダルは、ただの靴じゃない。夏の空気にスイッチを入れてくれる相棒で、今日の私を一段と好きにさせてくれる魔法。そう思える一足に出会えたこの感じを、私はずっと忘れたくない

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